研磨の種類
研磨という言葉が幅広い加工に適用されていることからも分かるとおり、研磨の方法や様式も産業界では多様になってきています。物体の表面を滑らかにする加工は研磨だけではありませんが、最も多くの現場で使われている一つの表面加工技術です。
「研磨」はその手法や様式、研磨する対象(被削材)、使う研磨材の種類や研磨機などによって分類方法がいくつもありますが、ここでは代表的な「研磨」の分類について見ていきます。
研磨材による分類
遊離砥粒と固定砥粒
研磨材は、「砥粒」と呼ばれる粒が加工しようとしている被削材の表面を削る働きをします。この砥粒を液体のなかに混ぜて用いる研磨材を「遊離砥粒」といい、反対に砥石のように形のあるものの中に入れられているタイプの研磨材を「固定砥粒」といいます。
研磨がこれらの遊離砥粒でなされているのか、固定砥粒でなされているのかによって使う機械や実現できる仕上げの面精度、加工時間などは大まかに決まってきます。加工する材質によってもベストな研磨方法は変わります。
遊離砥粒
スラリーや研磨材と呼ばれる製品の多くは、液体のなかに削るための粉である砥粒を混ぜた「遊離砥粒」です。液体そのものだけでは研磨することはできませんので、加工する対象を上下から挟んで、その間に研磨材を流し込んで使うのが主流の加工方法となります。ラップ盤やポリッシ盤と呼ばれる機械や、半導体のウエハー研磨に用いるCMP装置もこうした液体型の研磨材を使った加工になります。レンズやプリズムなどの光学部品でも多用される研磨手法です。ラップ盤の場合は、両面研磨、片面研磨の区別もあります。一般には、表面を削るのに時間がかかる研磨方法ですが、均一で高精度の表面を出すのに向いています。
液体ではなく、ゲルやゾルの中に砥粒を入れたものや、ペースト状のなかに研磨材を混ぜたものもあります。液体状の研磨材の難点は、常に研磨材が流れていくため、こうした液体を濾過させたり、循環させたりする機構が機械側に必要となる点です。手動で小さな部位のみを研磨したいときなどには、ペーストタイプの研磨材を塗ってフェルトなどのパッドを使って磨くこともあります。
砥石とは違って、液体やペースト状になった研磨材は単体では使うことが出来ず、フェルトやスウェードなどの磨くための資材も必要です。
固定砥粒
「砥石」と呼ぶほうが一般的ですが、この砥石の分類もいろいろな側面から見ることが出来ます。
回転する砥石としない砥石
ディスクグラインダーや卓上グラインダー、研削盤や研磨機のほとんどは砥石を高速で回転させることで研磨を可能にします。ただ、中には「揺動」や「振動」など砥石を高速で振動させることで対象を磨くタイプの砥石もあります。こうした揺動の運動と回転運動とを併用させる場合もあります。
回転砥石で、外周を使うタイプか、端面を使うタイプか
機械研磨で最も多い加工機械の一つである研削盤では、研削砥石を取り付けて使いますが、この際に加工に用いるのは砥石の「外周」です。一方、比較的大きな面をもつワークを加工するとき、外周による加工では一度に研磨できる面積が限られており、均一で広い面を仕上げるのにはあまり向きません。この場合、研磨盤と呼ばれる円盤状の砥石が良く使われます。鋳鉄や樹脂で作られた基盤の外周ではなく、端面に研磨の働きをする砥石を貼り付けてあります。これらの研磨盤は、チップと呼ばれる砥石を貼り付けることで平坦で均一な面を得るのに向いています。こうした研磨様式をバーチカルということもあります。
加工方法による分類
機械による研磨か、手動による研磨か
機械による研磨の場合、研削盤や研磨機、ラップ盤、ポリッシングマシーン、ホーニングマシン、バフ研磨機、CMP装置などがあり、それぞれの機械によって使われる業界は概ね決まっています。
手動研磨による場合は、包丁などを磨く砥石や、金型の仕上げ用のハンドラッパーなどを用いるものが該当します。機械では加工できない部位を手作業で行う場合がありますが、機械と手動研磨を併用する場合もあります。
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