御影石の研磨
御影石の研磨方法はどのように行うか
御影石の研磨は、ダイヤモンドを用いて行うことが主流となっています。その研磨方法は、小さい部位であればディスクグラインダーやハンドポリッシャー等を使うことが一般的で、床の御影石を研磨する場合はフロアポリッシャーに磨き用のダイヤモンドパッドや研磨パッドを装着して水をかけながら回転研磨によって行います。水を使う研磨は湿式といわれますが、水を使わない乾式の研磨で御影石をきれいに磨く方法もあります。DIYでは難しいかといわれれば、求められる程度にもよりますが、手順を踏めばきれいな鏡面仕上げを作ることは可能です。
まずは粗めの砥粒をもつ研磨パッドを使った研磨からはじめていき、徐々に砥粒を細かいものに研磨パッドを変えていくという方法がきれいに仕上げるコツで、各粒度(#や番手ともいわれます)で磨き残しがないようにしながら進めていきます。
砥粒というのは、砥石のうち、対象を削る役割を持つ「刃」のような部分で、ダイヤモンドを砥粒に使ったものが御影石の研磨では効率よく磨けます。人造ダイヤモンドが砥石として本格的に使われる以前は、アルミナや炭化ケイ素を砥粒にしたものを研磨剤として御影石の研磨にも用いていましたが、これらは硬さがダイヤほどないため、御影石のような硬い素材の研磨には時間がかかります。また、クリーム状のものにこうした砥粒を混ぜたものを使って磨いていく方法もあります。
- 御影石に適した砥粒、研磨剤
- ダイヤモンド、GC(緑色炭化ケイ素)
- 御影石の研磨方法
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- 研磨パッドを装着したハンドポリッシャー、フロアポリッシャー(石材製品全般、フロア)
- 液体状の研磨剤、化学薬品(メンテナンス用途)
- 研磨盤を装着した専用研磨機(墓石、建材等)
具体的に研磨パッドを使った御影石の研磨には以下の映像で紹介するような方法があります。
エアーポリッシャーを使った湿式での御影石研磨
平面、曲面ともにこうしたハンドポリッシャーを用いた研磨が可能です。均一な光沢度を出すには技量が必要ですが、いずれも研磨パッドは粗い粒度のものから細かいものに工程が進むごとに付け替えていきます。最後はバフ研磨をして仕上げとなります。
グラインダーを使った乾式での御影石研磨
どの程度の鏡面度を研磨で出すことができたかは光沢計と呼ばれる計測装置を使って測ることが多いです。表面粗さとはまた別で輝度をはかるもので、見た目の鏡面度がどの程度なのかを数値ができます。プロの研磨では輝度が100を超えてきます。
日本では御影石の主用途は墓石となっており、現在の研磨加工の多くは中国へいってしまいましたが、国内の御影石の研磨技術というのは世界トップクラスのものとされます。庵治石に代表されるような日本伝統の高品質、高価格の御影石を加工するのはやはり日本国内でという需要もありますが、御影石の研磨は大半は海外へ移管してしまっています。
御影石の性質
風化に強く、耐薬品性にもそこそこ優れ、何よりも高い硬度を持つことから建材として最も多用される石材が花崗岩(御影石)です。常に風雨にさらされる事を前提に作られる墓石も、この御影石で作られています。石材の国内需要のほとんどはこの花崗岩で用途は墓石が最も多く、次いで建築材料や石碑、モニュメント等とされます。国内で使われる石材のほとんどはこの御影石か大理石と言われますが、大理石と異なりGC砥石やC砥石などの通常の砥石では加工が容易ではなく、なかなか表面を削り落すことができません。したがって現在ではほとんどの御影石の研磨はダイヤモンド砥石が使われ、仕上げ工程に相当する部分で石材用のバフが使われています。
鏡面研磨された石材は、照明がくっきりと写りこむほどのもので、まさに鏡面そのものになります。色の深いものや濃いものほどこの写像性は高くなります。表面の凹凸や鏡面の度合いは、「表面粗さ」として計測することは精密用途の石材定盤以外などでは稀で、目視で判断されるか、光沢計を用いた「輝度」「光沢度」といった数値で判断されます。研磨によってのみ実現可能なこうした鏡面仕上げのほか、石材の表面に施す加工には自然な風合いを持つバーナー仕上げや叩き仕上げ(ビシャン仕上げ)などもあります。
御影石の名産地
なお御影石で有名な産地としては、インド、ブラジル、ノルウェー、フィンランド、中国、南アフリカ、ポルトガル等があります。日本では愛媛の大島石、香川の庵治石、青木石、茨城の稲田石、山梨の甲州小松石、福島の青葉石などが産地として有名です。なお、「御影石」の名称は元来、兵庫県神戸市の地名である旧武庫郡御影町、現在の東灘区御影石町を産地とする花崗岩のことを指していましたが、現在では花崗岩=御影石として知られていますので、ここでもこれに習って御影石を花崗岩の意味で用います。
同じ御影石でも硬さが違う
研磨や加工を考える際に問題となるのは加工対象であるワークの硬さです。前述のとおり、御影石は他の石材に比べても硬い部類ですが、同じ御影石(花崗岩)であっても、産地によってさらに硬度が変わることがあります。このため、ワークが同じであると考えて同じように磨いても、まったく同じ結果を得ることができないことがあります。もちろん、研磨後の表面の光沢というのは石の持っている色にも影響されるため、この違いも無視できない要素ですが、硬さが削れ方が違う感触となることは御影石の多様性を示す好例ともいえます。
御影石の種類とバリエーション
御影石の模様・デザイン・色彩は産地により多様なものがあり、その種類はなんと数百にも及びます。天然石材の種類は産地の数だけあると言われ、国によっては大きな産業となっているところもあります。インテリアや内装材としてもよく使われる海外では、デザインや模様にも流行があり、国によって人気のある産地も違います。日本では御影石は墓石やビルの外装や床材などのイメージが強いため、灰や黒の深みのあるものが想起されがちですが、国によっては国民性を反映してか、桃色や赤、茶色やカーキ色、緑、青系統などカラフルなものも使われる傾向があります。
石材の世界的な展示会は中国を中心に定期的に開催されていますが、展示会では世界各国の名産地から御影石の磨きこまれた大きな板材が運び込まれ、会場に展示されます。その模様の豊富さ、多様性の不思議さはまさに圧巻といえます。
御影石の成分
総じて言えば、日本国内では白色系、赤色系、黒色系で模様はゴマ塩状のものが多く出回っています。模様や色が違う石材は構成されている成分や鉱物が異なるため、正確に言うのであれば同じ御影石といっても同じ物性を持っているわけではありません。御影石の構成成分は、石英、カリ長石、斜長石、黒雲母、白雲母、普通角閃石、磁鉄鉱、柘榴石、ジルコン、燐灰石、輝石等と言われますが、御影石の種類によってこれらの含有比率が違います。石材の場合、同じ色でも模様が違うということは、こうした構成物質の比率が違うことになるため、研磨に大きく影響する要素と言えます。工業材料とは違った天然素材ならではの特徴の一つです。
高品質の御影石は水を吸いにくい
石材の品質は見た目のほか、吸水率で見ることもあります。これは石材の劣化の多くが水に起因するからで、より水を吸いにくい、つまり吸水率の低いものほど耐侯性、耐久力に優れ、風化しにくいと言われているからです。外観上も、目の細かいもののほうが高級品として扱われますが、キメの細かい石肌のものほど目が詰まっているため、水を吸いにくいと考えられます。
石材は墓石や建材と用いる場合、時間が経つにつれて風化したり劣化したりする「経年劣化」が問題となるため、石材の品質はよほど悪いものでない限り、建造後や建立後にすぐに問題になることはありませんが、あとあとになって目に見えて素材そのものの品質の良しあしや加工の出来不出来が明白になります。こうした経年劣化に対しては、質の高い研磨や、研磨後に石材の表面をコーティングしたり、石の表面にある空孔を埋めるシーラーを用いて保護するのが効果的です。
御影石の研磨というのはこうしたメンテナンス用途でも継続して実施されます。
御影石に似た新素材|キッチンの御影石はエンジニアリングストーン?
なお、キッチントップやカウンタートップ、テーブルなどに使われる御影石の中には天然のものではない人造石と呼ばれるものが使われる場合があります。人造石はエンジニアリングストーンとも言われ、天然の素材や人工的な素材を組み合わせて作られており、天然の石材とは異なる材料です。これらの研磨にはこうした材料に適合する砥石を選ぶ必要があります。
エンジニアリングストーンは一見すると御影石に似せて作られるデザインのものもあるため、誤認されることもありますが、石英の粉末に着色して御影石のように見せるエンジニアリングストーンなどはとても研磨しにくいものであり、耐薬品性や防汚性の高付加価値と引き換えに、加工自体の難度も上がっています。
御影石をはじめ、天然の石材の研磨を行う際は、それが本当に石材なのかまずは確認することが大切です。
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